中央研究所で触媒の研究を進める

大学・大学院では、理学部の化学科でNOx(窒素酸化物)の吸着剤を開発する基礎研究を行っていました。触媒に関わる研究を企業の研究職として進めたいという思いがあり、石油会社や化学メーカーを中心に就職活動をしていました。そんな中参加したのが、堺製油所の見学会でした。採用担当の社員と他の学生と一緒に堺製油所にある装置を見学したのですが、1人の社員の方が私たちを見つけて、立ち止まって丁寧に装置の説明をしてくれました。当日の見学会には関係のない社員の方だったと思います。私たち学生を見かけて、笑顔で気さくに親切に話しかけてくれて。とても印象的でした。コスモのありのままの雰囲気を知れた気がしてすごく安心した記憶があります。「人がいい」というコスモの印象は入社前の見学会の出来事から今まで変わらないですね。

2003年に入社して、中央研究所のガソリン製造グループに配属になりました。ガソリン系の硫黄分を低減するために吸着剤を使用する研究をしていました。研究内容としては学生時代に進めていたものと近いですが、大学院と企業での研究の違いは感じました。やはり企業での研究は「実用化に向けて」というはっきりした目的があるので、そこに向けてどんどん近づけていくというスピード感や手応えがありました。

2年目からは流動性分解触媒の開発に携わりました。千葉製油所と堺製油所の流動接触分解装置(FCC装置)で実際に使われた触媒です。当時の中央研究所では、流動性分解触媒の開発に力を入れていて、他社の触媒に負けないものを作ろうという意識で開発を行っていました。なかなか一筋縄ではいかない開発で苦心しましたが、製油所での実証化と評価、開発を繰り返しながら、実用化することができました。

知的財産・技術開発という面から
研究を支える

中央研究所で5年間務め、その後本社研究部の知的財産グループに異動になりました。正直かなり驚きました。「研究」という仕事から離れ「法律」に関わる仕事をすること。また扱うテーマも「触媒系」ではなく「バイオ系」で何もかもが知らないことばかり。どうやって出願するかも知らないし、「遺伝子」も「宿主」も学んだことがない。自分にとって新しい挑戦だと思って、腕まくりして新しい仕事に臨みました。

知的財産の仕事は文章しか戦う術がないので、事実をもとに理論を組み立て、審査官を納得させる文章をつくっていくのが難しく、面白い仕事でした。今まで自分が当事者として進めていた研究を第三者的な立ち位置で俯瞰するので、「説明するためにはこういうデータが効果的だな」とか「この治験で埋められるな」などと考えることができました。自分自身が研究をやっていたからこそより深く理解できた部分もあったと思います。知的財産グループには2013年の12月まで約5年間所属しました。

その後、本社研究部の中で技術開発グループに異動しました。会社としてどんな研究にどれくらい投資をしてどれくらい人員を配置していくのかということを企画していく仕事です。また、それぞれの研究が会社の収益や製油所の稼働にどれくらい貢献しているのかというなかなか評価が難しいことについて、できるだけ分かりやすくまとめて会社全体にアピールをしていく仕事でした。

製油所での生産管理・品質管理

入社した2003年から2016年3月までの14年間、中央研究所では研究者として仕事し、本社研究部では研究者としての経験を活かして法律や技術開発の仕事をしました。研究という仕事をさまざまな角度から捉え直し、学び続けることができた期間だったと思います。

私が入社してすぐの研修期間のような時期に、コスモの企業研究という形でコスモのさまざまな部門の仕事を勉強させてもらう機会がありました。その時に「供給」という仕事を知り、興味を持ちました。何をどれくらい作るのか、そのためにどこの製油所のどの装置をどれくらい動かすかを計画して実行するのが供給の仕事です。当時の自分は、「研究がしたい」という思いがあったので入社以来研究に携わる仕事をしてきましたが、「供給の仕事をいつかやってみたい」という思いも持ち続けていました。本社研究部時代の上司にもそんな思いを伝えていて、後に聞いたことですが「それならば」ということで、供給の現場である千葉製油所の生産管理課に異動することになりました。

製油所では月次・週次・日次の計画があり、計画に合わせて装置を動かし、タンクに貯め、出荷を切らさないようにマネジメントしていきます。研究ももちろん日々の仕事の積み重ねが大切ですが、現場での生産管理はより一層鮮明に「一日一日」の仕事をしっかりと進めることが大切です。緊張感のある仕事ですが、その分無事に仕事を完了できた手ごたえを毎日感じることができる仕事です。また、製造部門との連携が非常に大切なので、チームを超えた連携に一体感を感じる仕事でもあります。

千葉製油所で3年間務め、2019年の4月から現在の堺製油所で品質管理課課長として仕事をしています。生産管理では出荷量のマネジメントをしていましたが、品質管理課では文字通り品質をマネジメントしています。試験をして油の品質を確認し、調合のやり方や添加剤の使い方などについて製造部門や生産管理部門と協力しながら、コスモの品質を守る仕事です。

人との繋がりが、
新しい挑戦の支えになる

改めて振り返ると、技術系として入社し、部門としては研究から製造へ、職場としては研究所から本社を経て製油所へ、というキャリアを歩んできました。研究を経験してから製造の仕事をすることによって、研究で検討していたことが実際に現場で活かされていることを実感でき、お客様や社会に届けるという確かな手応えと責任を感じることができています。また、さまざまな職場を経験したことによって、さまざまな人との繋がりを持つことができました。製造の現場で感じたことを研究にフィードバックできたり、逆に何か知りたいことはすぐに研究所や本社に聞くことができます。大げさではありますが私のようなキャリアを経験した人間が現場に行くことによって、研究と製造がよりスピーディに連携し、互いに進化していくことができると思っています。

異動するたびに初めての経験ばかり。戸惑いがなかったかと言えば嘘になります。ただ、自分の挑戦は、会社としての挑戦でもあったんだなと今では思います。技術系としての新しいキャリアは、コスモの技術や品質を進化させるための新たな挑戦だと思います。新しい挑戦のたびに新しい職場の人たちがフォローをしてくれて、「研究から知財」「研究から生産管理」「生産管理から品質管理に」というそれぞれの場所で経験を活かす挑戦を支えてくれました。今の仕事を目一杯楽しみながら、いつかまた訪れるだろう挑戦にも前向きに取り組んでいきたいと思います。

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所などは公開当時のものです。